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COLUMN~コラム~

【~フィアスコのキャンティと『ローマの休日』~】
皆さん、こんばんは。井上ワイナリー広報担当の石関華子です。
冒頭の写真のワインのボトル、とってもユニークな形ですよね。
このボトルのことを、「フィアスコ」といいます。いつかコラムで取り上げたいと考えていたところ、先日たまたま近所のスーパーで売っているのを見つけました。
そこで、今日のコラムでは、この「フィアスコ」についてお話ししたいと思います。
フィアスコのボトルは、イタリアのトスカーナ地方の地ワインであるキャンティに使用されてきました。
その歴史は少なくとも500年以上はあるのだとか。
フラスコのように丸みを帯びたボトルは、藁に包まれています。これは、ぶつけても割れにくいようにするためなのだとか。いわば、緩衝材というわけですね。
今では機械編みが主流ですが、昔は農家の女性たちが農閑期に手作業で藁を編んでいたそうです。
私の母は、このボトルを見るなり、
「懐かしい!キャンティでしょ?」
と言いました。
母の話では、昔は東京にフィアスコを飾っているお店がよくあった、とのこと。
しかし、最近ではめったに見かけなくなってしまいました。一体、なぜなのでしょうか?
理由は様々です。
ボトルが場所をとるため、輸送や保管、陳列などに不便という実用的な問題。
それから、フィアスコに入っているキャンティが「庶民の安酒」というイメージが定着してしまったので、それを払拭し、キャンティのイメージアップを図るためなど…。
ところで、あの有名な映画、『ローマの休日』にもフィアスコが出てくるシーンがあるのです。
まだ観たことのない方の楽しみを奪ってしまうのは不本意ですので、あまり詳細には述べられませんが、フィアスコが惹かれ合う男女の身分の差を象徴する小道具として登場します。
このこともまた、「庶民の安酒」というイメージの定着に拍車をかけてしまったのだとか…。
こうして市場から姿を消してしまったフィアスコ。
ですが、私たち日本人からしてみれば、かえって新鮮だったり、オシャレに思えたりもしますよね。
それに、今ではキャンティにも上質なものもあれば、安くて美味しいものもたくさんあり、世界中のワイン愛好家を虜にしています。
その点では、やはり時と場所を超えて多くの人々に愛される『ローマの休日』とよく似ているかもしれませんね。
それでは今日はこのへんで。また来週!